乳歯がグレーに変色したのはなぜ?ぶつけたあとの歯に起こる変化

皆さん、こんにちは!イオンモール柏の向かいにあるウィズ歯科クリニックの日本小児歯科学会専門医の根本です。
転倒や遊具への衝突などで前歯をぶつけたあと、しばらくして乳歯が灰色っぽく見えることがあります。こうした色調の変化には、歯の内側にある神経や血管が傷ついたことが関係している場合があります。今回は、変色が起こる仕組みから受診や治療の考え方までご紹介します。
乳歯をぶつけたあとにグレーへ変色するのはなぜ?

◎表面が無傷でも歯の中では変化が起こる
乳歯に強い力が加わると、歯が折れたり欠けたりしていなくても、内部の組織が傷ついていることがあります。歯の中心部には「歯髄」と呼ばれる組織があり、神経だけでなく細い血管も通っています。転倒などの衝撃によって血管が傷つくと、歯髄内で出血し、その影響が歯の色に現れることがあります。
ぶつけた直後は歯が赤みを帯び、その後、灰色や褐色に変化することがあります。また受傷した当日は普段と変わらない白い歯に見えていても、ぶつけた直後は変化がなくても、しばらくしてから徐々に暗い色へ変わるケースもあります。
そのため、転んだ直後に歯の欠けや出血が見られなくても、それだけで歯に影響がなかったとは判断できません。しばらくは歯の色だけでなく、歯ぐきの腫れやできもの、歯のぐらつき、噛んだときの痛みなどにも注意しましょう。強くぶつけた場合や歯の色に変化が見られた場合は、早めに歯科医院を受診することが大切です。
一方で、一度灰色がかった乳歯が、時間の経過とともに元の色に近づくこともあります。そのため歯がグレーに変色したという所見だけで、歯髄の状態を断定することはできません。診察では色の変化だけでなく、歯のぐらつきや痛み、歯ぐきの状態、レントゲン画像などを総合して判断します。
◎強い外傷では乳歯の神経が影響を受けることも
歯に加わった衝撃が大きいと、乳歯の神経や血管へのダメージが回復せず、歯の内部の組織が正常に働かなくなることがあります。このようなケースでは、グレーや黒に近い色が長期間残ることもあります。
ただし歯が濃く変色したという理由だけで、すぐに乳歯の神経を治療するわけではありません。より注意したいのは歯茎が赤く腫れる、膿が出る、歯茎に小さな膨らみができる、食事の際に痛がる、以前より歯の揺れが増えるといった変化です。こうした症状がみられるときには、歯の根の周囲まで炎症が広がっている可能性があります。
小児歯科で外傷を診る際は、「何色になったか」だけを確認するわけではありません。どの方向からぶつけたのか、歯の位置がずれていないか、どの程度動くか、歯茎に傷がないかなども診察します。
乳歯では、大人の永久歯とまったく同じ方法で神経の状態を判定することが難しいケースもあります。そのため、一度の診察で結論を出すのではなく、必要に応じて時間を置きながら変化を追います。いつ、どのような場面で歯をぶつけたのかがわかれば、受診時にお伝えください。
乳歯が変色したら放置しても大丈夫?治療が必要なケース

◎色が変わってもすぐ治療が必要とは限らない
乳歯が灰色になっているのを見つけると、「このまま放置したら悪くなるのでは?」と心配になると思います。しかし、乳歯の変色が確認されたからといって、すべてのお子さまに治療が必要になるわけではありません。
痛みがなく、歯茎にも腫れや膿も認められず、感染を疑う変化がない場合には、歯を削ったり神経を処置したりせず、定期的に状態を確認する方法を選ぶことがあります。乳歯の外傷では、色が濃い状態が続いていても、それだけを根拠に神経の治療を決めるのではなく、口の中の症状や必要に応じたレントゲン所見を含めて判断します。
変色した状態のまま特に問題を生じず、永久歯への生え替わりを迎える乳歯もあります。ここで注意していただきたいのは、「治療せずに経過を見ること」と「乳歯の変色を放置すること」は異なるという点です。経過観察では、歯科医院で決められた時期に確認を行い、感染などの変化が起きていないかをチェックします。
家庭だけで様子を見続けていると、炎症が始まった際の小さな変化に気づけないこともあります。一度診察を受け、どのくらいの間隔で確認すればよいかを相談しておくと安心です。
◎歯ぐきの腫れや痛みを伴う場合は早めに受診を
変色した乳歯の周囲に別の症状が現れた場合は、治療が必要になることがあります。たとえば、歯ぐきがぷっくりと腫れる、膿が出る、ニキビのような小さなできものが繰り返し現れる、痛みが続くといった変化です。歯の根の周囲で感染が起きている可能性があるため早めに歯科医院を受診しましょう。
また乳歯の変色に対してどのような治療を行うかは、歯の状態によって異なります。歯の内部を処置して乳歯を残す方法が適していることもあれば、感染の程度や永久歯への生え替わりの時期によっては、抜歯を検討する場合もあります。
治療方法を判断する際は、お子さまの年齢や乳歯の根の状態、後から生えてくる永久歯の発育状況なども考慮します。単に「黒くなったから抜歯する」「グレーになったから神経の治療をする」と決めるのではなく、症状や検査結果を総合して判断します。
◎打撲後のレントゲンは状態を見て判断する
乳歯をぶつけて受診すると、「レントゲンは必ず必要ですか?」と質問されることがあります。外傷を受けた乳歯のすべてに撮影を行うとは限らず、けがの種類や診察時の状態によって判断します。
たとえば歯が大きくぐらつく、元の位置から移動している、歯や周囲の骨への損傷が考えられるといった場合には、レントゲンによる確認が役立つことがあります。肉眼では見えない歯の根や周囲の状態を調べるためです。
最初の診察時には撮影する必要がないと判断されたケースでも、その後に痛みや歯茎の腫れが現れれば、経過を確認するために撮影を検討することがあります。「乳歯を打撲したらレントゲンを撮る」と一律に考えるのではなく、お子さまの症状と経過に応じて必要性を見極めます。
乳歯をぶつけたときの受診目安と永久歯への影響

◎歯が折れていなくても受診した方がよいケースがある
子供が転倒して口元を打ったものの、「歯は折れていないし、出血も止まった」と自宅で様子を見ることもあるでしょう。ただ、乳歯の外傷は見た目だけで程度を判断しにくいことがあります。
子供が歯をぶつけた際の受診目安として、乳歯がいつもよりぐらぐらする、歯の位置や向きが変わった、歯茎からの出血が続く、上下の歯を合わせにくい、歯が歯茎の中へ押し込まれたように見える、といった状態が挙げられます。このような変化があれば、早めに歯科医院へご相談ください。
もちろん歯が欠けたり完全に抜けたりした場合も診察が必要です。永久歯では、抜けた歯を元に戻す処置を検討する場合がありますが、外傷によって抜けた乳歯は原則として元の場所には戻しません。乳歯の下で育っている永久歯を傷つけるおそれがあるためです。
また歯のけがだけに注意すればよいとは限りません。顔や頭を強く打っている場合や出血量が多くなかなか止まらない、意識を失った、吐き気や嘔吐がみられるなどの場合には、医科での診察を優先する必要があります。
◎乳歯の下では永久歯が育っている
乳歯はいずれ生え替わりますが、外傷を軽く考えてよいわけではありません。乳歯の根の近くでは、次に生えてくる永久歯が成長しているためです。特に前歯の乳歯を強くぶつけた場合は、その衝撃が成長途中の永久歯に影響を及ぼすことがあります。
乳歯の外傷による永久歯への影響としては、生えてきた永久歯の表面に白色や黄褐色の模様が見られたり、歯の形に変化が生じたりすることがあります。また外傷の程度によっては、永久歯が生える方向や時期に影響する可能性もあります。
なかでも、乳歯が歯ぐきの奥へ押し込まれるようなけがや、乳歯が完全に抜けてしまうほどの外傷では、成長途中の永久歯との位置関係に注意が必要です。
ただし乳歯に外傷を受けたすべてのお子さまに、永久歯への影響が現れるわけではありません。影響の有無や程度はけがをした年齢や衝撃の強さや、乳歯が動いた方向、その時点での永久歯の成長段階などによって異なります。そのため、受傷後は乳歯の状態だけでなく、永久歯への生え替わりまで継続して経過を確認することが大切です。
◎数週間後に現れる変化もある
乳歯をぶつけたときは、当日の状態だけで判断しないことも重要です。最初の診察では大きな異常が認められなくても、数日後から食事のときに痛がったり、時間がたってから歯の色が暗くなったりすることがあります。
ご家庭では、歯の色だけではなく、歯茎が腫れていないか、膿のようなものが出ていないか、以前より乳歯が動いていないかなどを確認してみてください。歯磨きについても、痛みが強くない範囲で行い、周囲を清潔に保ちます。食事の際には、けがをした歯に硬い食べ物や強い噛む力が集中しないよう工夫するとよいでしょう。
外傷の程度によっては、乳歯が抜けるまで長く経過を確認するケースもあります。一度グレーになっただけで慌てる必要はありませんが、色だけで歯の神経や根の周囲の状態を知ることもできません。
歯をぶつけたことがわかった時点で受診しておくのが望ましいですが、事故から時間がたっていても遅すぎるわけではありません。「以前ぶつけた乳歯の色が変わってきた」と気づいた場合にも、小児歯科で一度状態を確認してもらいましょう。
まとめ
乳歯を強くぶつけた後、時間がたってから歯がグレーに変色することがあります。これは、衝撃によって歯の中の血管や神経が影響を受けるためです。乳歯の変色だけで直ちに治療が必要になるとは限りませんが、痛みや歯ぐきの腫れ、膿などの症状がある場合は、早めに歯科医院へご相談ください。
乳歯の根の近くでは永久歯が育っているため、乳歯の外傷後は、歯の色だけでなく歯ぐきや根の状態も継続して確認することが大切です。お子さまが乳歯をぶつけた、歯がグレーになったなど、乳歯のけがや変色が気になる場合は、千葉県柏市で小児歯科診療を行う「ウィズ歯科クリニック」へお気軽にご相談ください。
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